野良人inモンハン
 ~野良人・寅の旅(モンハン編)~ 
 
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人斬り子鉄(中編)
2006年10月09日 (月) 19:19 | 編集
第1話はこちら→<人斬り子鉄(前編)


[11] 決行
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しとしと雨の降る一日であった。

全てが予定通り進んだ。

近藤は、待ち伏せる小鉄らの目の前を通り過ぎていた。

小鉄は目前に踊り出た。

小鉄は『近藤、覚悟!』と発した時には地を蹴り、切りかかっていた。

ガギッ!剣が火花を散らす。

続いて左右、後方から4人が襲いかかるはずである。

相手は2人。

必勝の形ではある。

が、小鉄は悪寒が走った。

そして、小鉄の勘が知らせた事態が起こっていた。

後方、左右の志士達の悲鳴があがる。

既に小鉄らは逆に新撰組精鋭部隊に取り囲まれていたのであった。

近藤が小鉄を見る目に笑みがこぼれた。




[12] 包囲
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新撰組とは、単なる武士の集団では、ない。

諜報に長けた組織であった。

それは志士らの情報網とは比較にならない規模で京都の町に張り巡らされている。

恐らく小鉄らの行動は初期の段階から筒抜けになっていたであろう。

さて。

サッと近藤から飛び退き、小鉄はしゃがみ込み、手を懐に忍ばせる。

古ぼけた武家屋敷を背にする小鉄を遠巻きにしていた輪が少しずつ縮められる。

奇妙な静寂が支配する。

『すでに勝敗は決した。武器を捨て、投降せよ。』

近藤が低い声で小鉄に話し掛ける。

が、小鉄の顔には追いつめられた恐怖はなかった。




[13] 炎
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近藤は気づいた。

『ま、待て!』

しかし、遅かった。

小鉄の手には火打ち石が握られていた。

懐から手を抜き、素早く地面に向かって火花を散らす。

ゴウッ!辺り一面が炎に包まれる。

バーン!近藤の背後で轟音が轟く。

火薬が爆発した。

昨夜のうち、小鉄はこの一帯によく油を染み込ませ、わずかながら、手に入れた火薬をも仕掛けていた。

轟音や炎に驚いた町人が路上に飛び出し、騒然とした。

新撰組隊士も突然の事に一瞬任務を忘れた。

隊士の中には炎に包まれるものもあった。

『落ち着けぃ!賊を逃すな!』

小鉄はすでにその場にはいなかった。




[14] 追手
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遠くであがる炎と喧騒を背に、京の路地裏を小鉄は音も立てず走っていた。

(新撰組か…)

危機は脱したとはいえ、計画は完全に失敗であった。

計画は漏れ、4人の同志を失った。

対決する以前の情報戦ですでに勝敗は決していたと言って良かった。

しかし小鉄に無念さは無かった。

(やはり、甘くはない)

無謀な計画に、むしろ腹が立っていた。

半刻ほども経ったであろうか。

町中をさまよっていた、小鉄の背後に殺気を感じた。

周囲の動揺をよそに、確実に小鉄を追っていた者があった。

小鉄も気付いていた。

人影のない神社へ逃げ込んだ。




[15] 沖田総司
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小鉄は神社に入り立ち止まり、追手を待ち構えた。

追手は一人であった。

『そんな所に隠れず、お手合わせ願えぬか?菊一文字がお相手致す。』

菊一文字…。

その刀を操るのは、新撰組にその人ありと言われ、京都の志士達を震わせた沖田総司である。

小鉄もその名は知っていた。

既に辺りは闇。

木陰から、月明かりに真剣を光らせ姿を現した。

言葉は不要である。

斬るか斬られるか。

それだけの事であった。

無言で近づく両者の間に張り詰めた空気が流れる。

どちらも無数の修羅場をくぐっていた。

リー、リー、リー…

虫の音だけが耳鳴りのように響いた。




[16] そよ風
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先に手を出したのは小鉄であった。

ブンッ!

横殴りに切りつける。

手応えは空であった。

沖田の剣が逆に首筋をかすめる。

身を引いた小鉄の前に沖田はいない。

左手から突き。

刀で交わそうとするが、刃は交わらない。

キラリ。

小鉄の頭上で何かがキラめいた。

体ごと飛びのく。

一瞬前、小鉄の首があった場所を沖田の剣が過ぎていった。

(これは、かなわぬ…)

小鉄は体でそう感じた。

沖田の口が開く。

『いや、見事だなぁ。わたしの剣をここまでかわせる人は、そうはいない。』

明らかに力の差があった。

静寂の中、そよ風が吹いてきた。




[17] 心境
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小鉄は焦っていた。

が、そよ風に吹かれるうち、不意に小鉄は自分の身が軽くなるのを覚えた。

一瞬頭にモヤが掛かり、その後しだいに小鉄の頭から意識が一つ一つ消えていった。

ついには、頭がカラになった。

自分の存在さえ、意識していなかった。

驚いたのは沖田である。

つい今まで圧倒的に自分が優勢かと思っていた相手から、青白い気迫が取り巻いているかに見えた。

軽々しくは動けない。

(・・・これほどの相手だったか・・・。)

沖田の首筋を一すじ、汗が流れた。

両者の距離は6尺。

一歩踏み出せば剣が届く距離である。

沈黙が辺りを包む。




[18] 決着
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スッと小鉄の構えが変った。

下段に構える小鉄。

沖田は中段。

沖田は動いた。

小鉄の肩を袈裟がけに切り下ろす。

スパッ。

雑草が宙に舞う。

刀すらあわせず紙一重で避ける。

間髪いれずに沖田の刀が横殴りに襲う。

飛びのいてかわすと同時に下段のまま小鉄が飛び掛かった。

ギィィン。

沖田は真剣でうけとめるも、小鉄は次の動作に入っていた。

受け止められた刃をくるっと翻し、沖田の脳天めがけて打ち下ろす。

沖田は死にものぐるいで、刀を天に向かって突き上げた。

ザグッ。

血しぶきが煙のように飛び散った。

小鉄は勢い余って転がっていった。




[19] 勝負の後に
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小鉄の左腕に激痛が走った。

手首から肘にかけて切られていた。

小鉄は、正気に戻っていた。

ハッとして右手に剣を握りなおしながら、敵を見た。

沖田は無傷であった。

しかし、様子がおかしいのである。

2、3度咳をしたかと思うと、口から吐血した。

『くっ、こんな時に・・・』

小鉄には沖田の吐血の理由はわからなかった。

左腕を抱えて神社を出て走った。

沖田は追ってこれないようであった。

しばらく走り、河原に出たところで歩いた。

九死に一生を得たようなものであった。

(奇妙な勝負だった)

小鉄は思った。

自分自身への驚きもあった。




[20] ツバメ
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2羽のツバメが闘っている。

1羽は大きく体つきもしなやかだ。

もう1羽は小さく、どことなく小鉄に似ているように見えた。

2羽とも青い空を舞いながら勢いをつけながら、何度か交差した。

明らかに小さい方が負けているようだった。

しかし小さいツバメは逃げようとしない。

しだいに、小さいツバメの体が青白い煙に包まれていくのがわかった。

そして、次に2羽が交わった時、1羽が地上にヒラヒラと落ちた。

それは、今まで無傷でいた大きいツバメであった。

そして、小鉄は目を覚ました。

とうに夜は明けている。

左腕が痛んだ。
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