野良人inモンハン
 ~野良人・寅の旅(モンハン編)~ 
 
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人斬り子鉄(後編)
2006年10月10日 (火) 08:21 | 編集
第1話はこちら→<人斬り子鉄(前編)




[21] 橋の下で
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気がつくと、それは、小鉄の唯一心安まる橋の下であった。

(無意識にここへ来ていたのか)

自分でも可笑しく思え、少し微笑んだ。

ズキッ!左腕が痛む。

思ったより深い傷だったようだ。

右腕で傷口を押さえると、布きれが巻いてあった。

布をほどくと簡単だが的確に手当てがしてあるようだった。

(誰が?)

心当たりの無い事であった。

『あ、お気づきどすか・・・?』

背後で声がした。

娘がいた。

娘も今起きたらしく、寝ぼけ眼でこちらを見ていた。

『この手当ては・・・?』

傷口を指差して小鉄が聞いた。

小鉄は思っていた。

(もしや、この娘は)




[22] おゆき
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(板に文をしたためていた娘ではあるまいか?)

傷の手当ては娘がしていた。

しばらく見つめ合いながら、どちらも同じ事を考えているようであった。

娘が口を開いた。

『もしや、お侍さまは・・・。』

娘は板キレに目をやり、次を口に出せずにいる。

小鉄は軽くうなずいた。

娘の顔がパッっと明るくなった。

それから1刻ほど、2人は橋の下で河の流れを見ながら話した。

話しているうち、互いに童心にもどったように、小さい頃の事などたわいもない事を話した。

『おゆき。』

娘は名をおゆきと言った。

『オレは人斬りだよ。』

小鉄はつぶやいた。




[23] その夜
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小鉄は、橋の下で手紙をやりとりした娘と出会った。

娘の名は、おゆき。

そして今、目の前に娘はいた。

小さな旅篭の2階である。

失敗した計画を実行するために、わずかながら路銀を受けていた。

それをはたいて、おゆきと一晩を共にした。

事が終わり、お互いの額をくっつけるようにして、目を閉じた。

『この時間が・・・永遠に続けばいいのに・・・』

娘が本心からつぶやいた。

小鉄は優しく娘の髪を撫でた。

『そうだな・・・。』

小鉄はつぶやいた。

小鉄の中に今まで感じた事のない気持ちが溢れてきていた。

2人は1夜かぎりの夫婦であった。




[24] 一日千秋
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その後の小鉄は、日を無為に過ごしていた。

長州志士の元締めとなっていた呉服問屋は、計画失敗と同時に新撰組の襲撃にあい、壊滅していた。

もはや最後の拠所もなくし、新撰組の浪人狩りから身を隠す日々であった。

そうしているうちにも、おゆきへの思いは募るばかりであった。

あの時湧き出した気持ちが、止まらないのである。

人の気持ち、男と女というものは、そういうものなのかもしれない。

幸い金はあった。

数日前、襲ってきた新撰組隊士を斬った際に、拾った懐中時計が値打ちモノであった。

小鉄はおゆきと会った旅篭へ出向いた。




[25] 脱出計画
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旅篭の外には新撰組隊士が集結しつつあった。

一方。

小鉄の目の前のふすまが開き、そこにおゆきが居た。

おゆきの目には涙が溢れていた。

小鉄はおゆきを抱き寄せ、耳元で言った。

『おゆき、オレは長州へ脱出する。』

おゆきが小鉄の顔を見つめる。

哀しげに遠くを見いるようだった。

一方。

階下では、しだいに人の動きが激しくなっている。

『2人はオレに続け。残りの者はこの旅篭を包囲しておけ。ゆくぞ・・・。』

小鉄は気づかない。

おゆきを見て言った。

『おまえも、一緒に来い。夫婦に・・・なろう。』

おゆきの目に輝きが戻った。




[26] 襲撃
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『小鉄様・・・。』

大粒の涙を流しながら、おゆきは小鉄にしがみついた。

小鉄が肩を抱くと、ブルブル震えていた。

『うれしゅうございます。・・・しかし、私は、このような稼業をしていた女・・・。』

おゆきの涙を指で拭いながら小鉄は言った。

『過去を気にするんじゃない。今夜ここを抜け出し、共に・・・』

バタバタッ!バン!ふす間が突然開かれた。

同時に人が飛び込み、立ち上がろうとした小鉄の右腕を斬った。

畳が赤く染まった。

おゆきを背にかばう小鉄。

小鉄の剣はおゆきの後ろにあった。

おゆきが小鉄にそれを渡そうとした時・・・。




[27] 別れ
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2番目に飛び込んできた隊士がおゆきの背を斬った。

斬られながら、おゆきは右手に握った剣を小鉄に渡そうと手を伸ばす。

小鉄はそれを握らなかった。

『おゆき!』

倒れる娘を抱き支えた。

『死ぬな!』

小鉄は娘の手を握った。

涙が溢れていた。



・・・ここで、この物語は終わる。

小鉄の命は、次の瞬間、果てた。

容赦なく白刃は小鉄の後頭部を切り下げた。

旅篭から出てきた新撰組副長・土方歳三に、外を固めていた沖田総司が聞いた。

沖田は階段を上り現場を見た。

そこで、娘の手を握りかばうように横たわった男がいた。

確かに小鉄であった。




[28] 夢
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小鉄の隣には、おゆきが居た。

心地よい小春日和の中、二人は、小鉄の故郷の入り口に立っていた。

『ようやく着いたな。』

小鉄は隣のおゆきを見た。

微笑むおゆき。

その上を小鳥がさえずりながら飛んでいく。

小鉄は、おゆきの手をとりながら、駆け出した。

小鉄の中に暗殺者のカゲはすでに無かった。

そして、おゆきの心にもカゲは無かった。

そして、2人が空を見上げると、太陽の光がどんどん広がった。

そして、光が2人を包んだ。




沖田はそばの花瓶から一輪の花を抜き、2人の手の上に置いた。

『来世でも2人が出会えますように。』




[--] あとがき
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これで小鉄のお話はおしまいです。

哀しい結末になってしまいましたが、2人は最後に、お互いによってお互いの傷を癒されたのではないかと思います。

世界でただ一人の相手に出会えたのではないでしょうか?幕末の時代には日本のために、青春をついやし倒れた志士は大勢いました。

方法の違いはあれ、外国の脅威から国を守るために命を賭けたのです。

きっと、今の私たちの生活があるのは、そのような人達のおかげでもあるのではないでしょうか?稚拙な文章を、最後まで読んでいただいて、感謝しております。

ありがとうございました。
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